最終更新日:2021/04/13
ミモレット(Mimolette)は、日本でもとても人気のあるチーズです。
目を引く鮮やかなオレンジの生地に、からすみと表現されるような日本の食卓にも馴染みやすい風味が特徴です。
今はスーパーなどでも簡単に入手でき、知名度も高まっています。
この記事では、そんな日本人が好むチーズのひとつ「ミモレット」の特徴や食べ方を解説します。
Contents
チーズの分類:セミハード~ハード
産地:フランス(北西部)
原料乳:牛(殺菌乳)
固形分中乳脂肪:最低40%
ミモレットの原産地は、フランス北部フランドル地方、ベルギーとの国境近くのノール=パ・ド・カレー地域圏の街「リール(Lille)」と言われています。
起源はルイ14世時代に遡ります。フランスは1672~1678年までオランダと戦争状態にあり、財務総監のジャン・バティスト・コルベール(Jean-Baptiste Colbert)はオランダの製品に高い関税をかけ、オランダのチーズを実質輸入禁止にしました。
それにより、当時フランスで人気だったエダム(Edam)というオランダ産チーズの供給が不足したため、フランス北部のチーズメーカーにエダムの模倣品を造らせたことが始まりと言われています。その際、オランダ産エダムと区別するために生地をオレンジに着色したと言われています。
ただし、起源については今も論争があり、オランダの「コミッシーカース(Commissie Kass)」というミモレット同様のチーズをフランスが模造したとするオランダ発祥説もあります。
ミモレットの名前は、フランス語で「半分柔らかい」を意味する「mi-mollet(ミ・モレ)」に由来します。
熟成の若いミモレットは柔らかくナイフでカットしやすいのでそのように呼ばれたのかもしれません。
また、ミモレットには、フランスでの発祥地であるリルの街名に由来する「ブール・ド・リル(Boule de Lille)」という別名もあります。
現在ミモレットは、フランス北部で主に生産されています。
かつての主要産地であったフランドル地方に加え、ノルマンディー地方やロワール地方でも造られています。
また、オランダで製造されたチーズをフランス北部で熟成させたミモレットもあります。
ミモレットには熟成期間に幅があるチーズで、その差によって風味も大きく異なります。
ミモレットには、熟成期間によって以下のような呼び名があります。
ジュンヌ(jeune):熟成2~6か月
ドゥミ・ヴィエイユ(demi vieille):熟成6~12か月
ヴィエイユ(vieille):熟成12~18か月
エクストラ・ヴィエイユ(extra vieille):熟成18~24か月
熟成の若いミモレット ジュンヌは、明るいオレンジ色でセミハード、味わいもクセがなくマイルドなチーズです。
一方で、熟成の長いミモレット ヴィエイユは濃い茶色がかったオレンジで、生地は硬くなり、味わいはより凝縮して強く、風味もからすみのような旨味をともなうものに変化します。
このように熟成期間による風味の違いもミモレットの魅力のひとつです。
ミモレットは、つくり方にも特徴があります。
ミモレットの特徴である生地のオレンジ色は、アナトー色素(ベニノキの種子から抽出した天然の色素)によって着色されます。
そして、表面の小さな穴が無数にあいたゴツゴツとした外皮は独特の熟成方法によって形成されます。
ミモレットは、表面に「シロン(Ciron)」というコナダニを繁殖させて熟成させます。
外皮に育ったシロンは、チーズの外皮を食べ無数の窪みを造ります。その穴が表皮の表面積を増やし水分コントロールをすることでチーズの硬く締まった生地が形成されます。
また、コナダニはカビを餌にするので、カビによる脂肪の分解を防ぎます。さらに、特有の香味成分を分泌し風味を複雑にします。
シロンは人を刺すダニとは違い、食べてもアレルギーや害を引き起こすことはありません。しかし、2013年にはアメリカで、シロンがアレルギー反応を引き起こす可能性があるという理由からミモレットの輸入が禁止されました。現在は、輸入は再開されており、実際にミモレットによる健康被害も報告されていません。
熟成中は、外皮を丁寧にブラッシングして健全な熟成を促し、熟練の技師がハンマーで叩いて音によって熟成状態を確認します。
熟成の若いセミハードのタイプは、ハードナイフや包丁でカットします。
熟成が進んだハードタイプは、切り方によって風味の感じ方が異なります。
アーモンドナイフなどでかち割り氷のようにチーズを砕いたり、厚めにカットすることで旨味をしっかり感じることができます。
一方で、薄くスライスするような切り方は、風味をより強く感じさせます。これは食べるときにチーズとともに空気がより多く含まれるためです。
また、チーズをすりおろして料理にかける食べ方もおすすめです。
ミモレットをどのように楽しみたいかで切り方も変えてみましょう。
ミモレットは、購入時に付いているチーズセロファンかアルミ箔、あるいはラップで包み、密閉容器に入れて冷蔵保存します。
ミモレットは、熟成期間の長いものであるほど生地の水分量が少ないため日持ちします。
特に「エクストラ ヴィエイユ」レベルになると、賞味期限はほぼ無いようなものです。
とはいえ、冷蔵庫での保存は時間とともに風味の劣化が起こりやすいため、基本的には早く食べきることをおすすめします。
チーズ自体にクセはなく食べ方も多様です。
熟成の若いジュンヌは、サラダやサンドイッチの具材に入れる食べ方が主流です。
熟成の長いヴィエイユは、そのままおつまみとして。
あるいは、濃厚なからすみのイメージで料理にすりおろす食べ方もおすすめです。
パスタやグラタン、和食とも大変マッチします。
もちろんお酒ともよく合います。
熟成の若いジュンヌは軽めの赤ワインやコクのある白ワイン、ビールなど比較的軽やか味わいのお酒がおすすめです。
また、熟成したヴィエイユは風味の強いビールやウイスキー、さらにからすみ様の風味が強くなるので日本酒や焼酎ともよく合います。
ミモレットはオレンジの生地とゴツゴツした表皮の個性的な外観に反して、風味はマイルドで多くの人に好まれる味わいです。
そして、そのマイルドさの中に熟成によって複雑で独特の風味が現れます。
個人的に一番のおすすめは18か月以上熟成させたエクストラ・ヴィエイユです。
独特のからすみの風味が魅力的で和食や日本酒などにもよく合い、料理からおつまみまで幅広く使えます。
ミモレットは、冷蔵庫にあればいつの間にか無くなっているようなとても使い勝手の良いチーズです。