最終更新日:2020/05/10
パヴェダフィノアは世界に輸出されるフランス産チーズの中では歴史は浅いですが、近代的な技術を使った品質の高さから世界中で愛されているチーズです。
このチーズの特徴でもある製法には、チーズプロフェッショナルなどの専門試験でも必出の「ウルトラフィルトレーション」という技術が使われています。
この記事では、パヴェダフィノアの知っておきたい基礎知識に加え、パヴェダフィノアのアソート「ミックス5P」の各種類をご紹介します。
Contents
パヴェ ダフィノアの産地はフランスのオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ圏のロワール県。リヨンのあるローヌ県の西隣に位置します。
チーズの名前の「パヴェ」とは、フランス語で「石畳」を意味します。このチーズのようにブロック型をしたチーズに付けられる名前で、パヴェダフィノアの他にもパヴェと付くフランスのチーズはいくつかあります。
また、「ダフィノア」にも由来があります。
パヴェダフィノアが誕生した地は、現在拠点を置くロワール県ではなく、その南東に位置するイゼール県でした。かつてのドーフィネ州の一部です。
ブランドサイトによると、パヴェダフィノアは1981年の誕生当初、「パヴェ ドフィノア( Pavé Dauphinois)」という名前のチーズだったとのこと。つまり、ドーフィネ地方のブロック型のチーズという意味です。
その後すぐにチーズの名前は、フランス語で「熟成」を意味する「アフィナージュ(Affinage)」とかけて「パヴェ ダフィノア(Pavé d’Affinois)」となりました。
ちなみに、パヴェダフィノアの生産拠点が現在のロワール県に移ったのは誕生から2年後の1983年のことです。
パヴェダフィノアを語るうえで必ず出てくるのが「ウルトラフィルトレーション(UF)」という製造技術です。
ウルトラフィルトレーションとは、限外ろ過膜(UF膜)という極めて目の細かい濾材を使って原料乳からチーズ造りに必要な成分を取り出す技術です。
つまり、特殊な濾材を使いチーズ製造に不必要な「水分」「乳糖」の一部を取り除きます。
パヴェダフィノアは、こうして残った凝縮したミルクにスターターとレンネットなどを入れて凝乳をつくり、白カビを吹き付けてセラーで熟成させてつくられたチーズです。
このウルトラフィルトレーションの製法を採用すると以下のようなメリットがあります。
・チーズ製造に不必要な成分をあらかじめ取り出しているので、より小さなチーズバットで乳を凝固させることができ、作業量も少なくできる。
・歩留まりがよくなり、従来の製法よりも乳の栄養成分(カルシウムやたんぱく質など)をより多く含んだチーズができる。
・ムラなく均質でクリーミーなテクスチャ―
・安定した品質
パヴェダフィノアは、開発当初からこのウルトラフィルトレーションでつくられています。
パヴェダフィノアは、上記のような近代的な製造技術を使用した工場製の白カビタイプのチーズです。
立方体の組織の表皮はきれいな白カビに覆われています。
香りは穏やかで、ほのかにキノコや土っぽいニュアンスを感じます。
写真は熟成の若いパヴェダフィノアの断面
内部の生地は滑らかなでクリーミーな質感で繊細な口当たりです。
味わいは塩味は穏やかで、まろやかでクリーミー。白カビチーズのクセもとても穏やかです。
固形分中の乳脂肪は45%と通常のチーズと同レベル。クリームのしつこい重たさもありません。
このようにクセがなく食べやすい味わいが特徴のチーズです。
また、パヴェダフィノアは熟成によっても変化します。
生地は熟成するにつれて柔らかく流れ出るほどになり、味わいもより濃厚になります。
写真はミニサイズのパヴェダフィノア ブランの断面
どの熟成段階でも美味しいチーズですが、熟成して生地がトロトロになるまで柔らかくなったパヴェダフィノアは特に魅力的です。
チーズ上部の皮を取って生地をスプーンですくって食べたり、ディップにして楽しむ食べ方もよく知られています。
ワインは、シャンパンやコクありの白、軽めの赤ワイン(ボージョレなど)がおすすめです。
パヴェダフィノアは、サイズや成分、フレーバーの違いによっていくつかの種類があります。
サイズは、150gがスタンダードですが、300g、200gの大型のものから、 30gのミニサイズのものもあります。
また、乳脂肪分の多い「クレムー」や少ない「レジェ」。山羊乳の「シェーブル」羊乳の「ブルビ」、フレーバーを効かせたものなどバリエーション豊かです。
また、人気の5種類をミニサイズでアソートしたものも販売されています。
こちらがその「パヴェダフィノア ミックス5P」(カルディで購入)。以下、簡単に5種類をご紹介します。
上でご紹介したスタンダードなタイプ。クリーミーで繊細。クセがなく誰もが美味しいと感じる万人受けする味わいです。
乳脂肪分の比率をより高めたリッチなタイプ。生地はより滑らかで舌の上で自然に溶けるほどクリーミー。バターのようなコクをより強く感じます。
羊のミルクでつくったタイプ。羊や山羊のミルクには牛乳と違いカロテンが含まれないので生地の色はより白いです。羊乳らしい凝縮したコクと甘みのある味わい。羊独特のクセはそれほど強くありません。塩味も強く5種類の中では最も濃厚な印象。濃いめの赤ワインが合います。
山羊のミルクでつくったタイプ。山羊乳の独特の風味は感じますが、特有の酸味は少なくまろやか。塩味が効いていて旨味も強く感じ凝縮した味わいです。シェールブルの爽やかな香りをアクセントに濃厚な味を楽しめます。
アナト―色素で表皮がオレンジ色の少しウォッシュのニュアンスのあるタイプ。味わいはフルーティーでマイルド。クセは強くありませんが、後味の風味にウォッシュらしい鼻を刺すようなかすかな刺激があります。
以上のように、パヴェダフィノアは、近代的な技術を使い、現代人の好む味に仕上げたチーズとも言えます。
クセがなくマイルドでありながらコクや旨味は強く、キメの細かいトロリと柔らかい食感はまさに日本人好みの味わい。
日本ではまだ比較的マイナーなチーズではありますが、日本人にこそおすすめしたいフランスチーズのひとつです。