最終更新日:2020/03/09
あなたは「チーズプロフェッショナル」という資格を聞いたことがありますか?
この資格は簡単に言えばチーズのソムリエです。
チーズに関する資格はいくつかありますが、一番知名度と難易度が高いと言われているのがこの「チーズプロフェッショナル」です。
あまり聞き慣れない資格だけに簡単に取得できると思いきや、実際は本気で勉強しなければ受からない難関です。
私も数年前に独学でチーズプロフェッショナルを取得しました。
同じくワインのソムリエ資格も持っていますが、ソムリエの試験と同等以上の時間をかけた記憶があります。
この記事では、そんなチーズプロフェッショナルの資格の概要や対策法をお伝えします。
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チーズプロフェッショナルとは、「NPO法人チーズプロフェッショナル協会」が認定する呼称資格です。
資格認定の要件は、
「チーズに関して基本的なことを十分に理解し、チーズについてお客様に丁寧に適切な説明が出来、経験に基づいて理にかなったチーズの取り扱いが出来ること」
とあります。
現在、計3364名の認定チーズプロフェッショナルが全国各地で活躍しています。
受験資格は唯一、チーズプロフェッショナル協会の全期会員であることです。
この会員になるには、入会金と年会費合わせて、15,000円支払う必要があります。
さらに受験料が、11,000円。
合格後には、デュプロム、バッジ代として、11,000円かかります。
つまり、資格取得までに最低37,000円かかります(合格したらバッジはほしいですよね)。
高い気もしますが、野菜ソムリエなど10万円以上かかる資格があることを考えると妥当な気もします。
試験は2回に分けて行われます。
1次試験は、チーズの知識を問われる筆記問題。
2次試験は、テイスティングと論述問題がメインとなります。
合格基準は、全問題の70%以上の正答です。
1次試験に合格すると、次年度に限り2次試験の再受験が可能です。
開催は年に1回で、1次試験は7月中旬、2次試験は10月初旬に行われます。
それでは、この試験の難易度を見てみましょう。
2019年の受験者、合格者数です。
1次試験 受験者数539名 合格者数268名 (合格率49.7%)
2次試験 合格者数172名
前年受験した1次試験免除の受験者数を70名(2018年実績)と仮定すると、1次2次トータルの合格率は、
172名/(539+70)名 = 28.2%
(2018年は32.3%、 2017年は25.9%、2016年は22.5%、2015年は28.8%)
つまり、1次試験からストレートでの合格率は20%台です。
そう考えると知名度のわりに、難易度はかなり高いことがわかります。
それでは、そんな難関な試験には、いったいどのような問題が出るのでしょうか。
協会で過去問題を公開していますので、ぜひ確認してみてください。
試験問題は、基本的に協会が出版している教本(約240ぺ―ジ)から出題されます。
「基本的に教本の記載内容が十分に理解できていれば合格できる」と受験要項にあります。
教本の記載内容から幅広く出題されます。
また、試験問題のほとんどは記述式です。
チーズ名は原語で書くなど、正確な知識も要求されます。
また、文章問題も多いため、専門用語の断片的な記憶だけでなく、その意味を理解し自分の言葉で人にわかりやすく伝える力が試されます。
ちなみに、受験要項には、
「記述内容が一応正しくても、冗長な文脈、回答枠からのはみ出し、殴り書き等、的確さや丁寧さに欠けるものは、お客様への適切かつ真摯な接遇対応力に問題があると判断され、減点対象となります。」
とあります。当たり前ですが、採点者への気遣いも必要です。
2次試験は、テイスティングとより実務的な場面を想定した論述問題がベースになります。
テイスティング問題は、数種類(2~6種類)のチーズをテイスティングして、そのチーズの外観、テクスチャ―、風味の各要素についてコメントを記入します。
また、そのチーズに関する製法や特徴、手入れの仕方等についての記述問題もあります。
さらに、より実務的な販売の場面を想定した記述問題もあり、専門知識だけでなく時事的なニュースも含めて総合的な実践力が試されます。
この試験の難しいところは、まず試験のほとんどが記述式であり、あいまいな知識では得点ができないところです。
マークシートであれば、勘で選んで正解になることもありますが、そういった潰しが一切ききません。
また、対策本なども出版されていないことから、独学でやる場合、教本と過去問のみで対策することになります。
また、テイスティング試験や文章問題もあるので、教本の表面的な暗記だけでは合格できません。
ワインスクールなどで対策講座がありますが、数も限られています。
そういった意味では、受験者はそれなりの覚悟を持って真剣に臨まないと合格できない資格であると言えます。
では実際、どのような対策が必要なのでしょうか?
まず1次試験に関しては、とにかく教本を理解して暗記する必要があります。
私は独学で合格しましたが、教本と過去問以外に、いくつかの書籍を参考にしました。
※おすすめ書籍はこちら→「チーズの本で勉強したいあなたへ!おすすめ良書7選!」
しかし、現在の教本は、私が受験した当時の教本よりも写真やイラストも多くとても分かりやすくまとまっています。
ですので、まずは教本に集中して、2~3回流し読みをして全体像を把握するのがおすすめです。
その後、過去問題をやってみると覚えるべき要所や苦手箇所がわかってきます(協会のホームページで過去数年分の過去問題が掲載されています)。
そして、そこから課題を見つけて知識を補完していきます。
適した対策の仕方は人それぞれあると思いますが、自分のまとめノートを丁寧につくるのはおすすめしません。
よく失敗するパターンに教本の最初から丁寧にノートをつくって途中で挫折したり、ノートをつくることだけで満足してしまう人がいます。
重要なのは、ノートをつくることではなく理解して人に伝える力をつけることです。
まずは、わからないところも飛ばすくらいのつもりで教本を何回も読んでいきましょう。
暗記も意識的に行うのは直前で十分です。
教本やチーズに関する文章をたくさん読めば自然と頭に入ってきます。
当サイトの他の記事も暇つぶしにぜひ読んでみてくださいね。
一方、2次試験対策は実践的な問題がメインになります。
テイスティング対策に関しては、チーズを実際に買ってテイスティングを繰り返します。
私はチーズ屋さんでとにかく何十種類も買って、冷蔵庫をチーズで満たしました。
ただ、テイスティング力の磨き方は、量よりも質を意識しましょう。
重要なのは、そのチーズの銘柄を当てることではなく(銘柄を問う問題はあってもごくわずか)、客観的にテイスティングして分析する能力です。
具体的には次の方法がおすすめです。
例えば、「口溶けは繊細」という表現があります。
でも、「繊細」の基準ってわかりませんよね?
それを知るには繊細なチーズとそうでないチーズを食べ比べることが必要です。
例えば、繊細と言われている「ラングル」というウォッシュチーズと安価なウォッシュチーズを食べ比べてみます。
そうすれば繊細の意味が体感できます。
このように、テイスティングコメントの言葉の意味を体感して理解することで説得力のある解答ができるようになります。
ちなみに、私がテイスティング対策で最もおすすめする本がこちら。
本書では、各チーズの外観、香り、味わいのコメントが教本よりも細かく表現されています。
しかも、チーズプロフェッショナル協会監修で、まさに試験に出題されそうな要所がまとまっています。
181種類のチーズが取り上げられいるので、本書を見ながらチーズを味わって、そのコメントの意味を体感しながら理解することができます。
2次試験では、ただテイスティングコメントが書けるだけでは足りません。
そのコメントで表現した特徴が、どんな製法からくるのかという要因を説明できなければいけません。
例えば、そのチーズの表皮がオレンジ色なのはどうしてなのか?
それは、リネンス菌が出す粘液の色、アナト―色素によるもの、というように。
とにかくチーズを食べてあなたが浮かんだ疑問、あるいは他の人が食べて浮かびそうな疑問を解消して、説明できるようにしましょう。
製法の特徴だけでなく、産地や乳種の特徴、保存の仕方、皮は食べられるのか、賞味期限、添加物、そのチーズの付け合わせ、お酒等の飲み物は何が良いか、おすすめの食べ方は?など広い角度から考えてみましょう。
そういった広い知識で自分の引き出しが多ければ多いほど魅力的な回答ができるようになります。
このように、ただやみくもにテイスティングするのではなく、上記の点を意識し、考えながらテイスティングを繰り返しましょう!
また、2018年の試験のように時事的な問題も出題される傾向があります。
ある一分野の暗記にこだわるのではなく、常に広くチーズに関わる本や記事に触れていることが重要です。
以上述べたように、独学でこの資格を取得するのは思っている以上に大変です。
でも、チーズが好きであれば、この勉強の時間も決して苦痛ではないかなと思います。
自分の興味があることについてどんどん知れる楽しさを感じることができますし、試験の結果と関係なしにその後の人生もより充実したものになるでしょう。
もし興味を持たれた方はぜひ挑戦してみてください。
当サイトでも、試験に出題されるような内容をどんどん掲載していきます!