最終更新日:2019/03/27
クセのあるチーズとして敬遠されがちなチーズの1つが「シェーブル」と呼ばれる山羊乳製のチーズです。
日本ではまだそれほど馴染みがないチーズですが、本場フランスではチーズ屋さんに何種類もずらりと並ぶ人気の種類です。
現在、日本でも美味しいシェーブルチーズが増加中で健康効果も高く、これから人気が上昇するのは間違いありません。
この記事では、そんなシェーブルチーズの味や特徴、健康効果、人気の種類など山羊乳製チーズの魅力をたっぷりとご紹介します。
Contents
まずは、山羊乳製チーズの特徴を見ていきましょう。
もちろん種類によって違いがありますが、一般的に以下のような特徴があります。
山羊のミルクは、牛乳に比べて乳に含まれるカロテンが少ないため色が白いのが外観上の特徴です。
シェーブルチーズは製法上の特徴(後述)により、基本的に柔らかく崩れやすい組織をしています。
そのため、小型なものが多いのが特徴です。
シェーブルチーズの好き嫌いを分ける一番の要因が、山羊乳特有の香りです。
熟成が若いフレッシュなものは山羊特有の香りは穏やかで、熟成が進むにつれて強くなります。
また、チーズの種類や品質によっても香りの強弱に差があります。
本当に上質で上手く熟成されたものには全くクセを感じないという熟成士もいます。
味の特徴は、ほのかな酸味です。
通常のチーズは、凝乳酵素を使いミルクを固めます。
一方、シェーブルチーズは多くの場合、乳を固めるのに凝乳酵素はあまり使わず乳酸菌がつくる酸の力で凝固させます。
そのため、味わいも他の種類のチーズよりも酸味があり、香りにもヨーグルトのような柔らかい香りが感じられます。
熟成もあまりさせず、フレッシュさを残したチーズが多いため傾向として味わいは爽やかです。
シェーブルチーズは最も体にやさしいチーズとも言われています。
シェーブルの主な健康効果を見ていきましょう!
チーズのタンパク質は主に「カゼイン」という種類のタンパク質です。
しかし、カゼインにも種類があり「αS1-カゼイン」というカゼインには人によってアレルギー性があると言われています。
人間や山羊の乳にはαS1-カゼインが含まれておらず、牛乳よりもアレルギー性は低いと言えます。
山羊乳の脂肪球は、牛乳や羊乳よりも小さいため消化によく体に負担の少ない性質があります。
また、他の乳種のミルクよりも中鎖脂肪酸を多く含み、脂肪が蓄積しにくいなどの健康上のメリットもあります。
山羊乳チーズは、主に乳酸菌による働きでミルクを固めます。
また、熟成の若い段階で食べるチーズが多いためチーズには人間に有益な乳酸菌がたっぷり含まれています。
消化に良いだけでなく、腸内環境を整える乳酸菌も摂取できます。
フランスでは、「シェーブルにはじまり、シェーブルに終わる」と言われるほど、山羊乳製チーズは体にやさしいチーズとして知られています。
美味しいだけじゃなく健康にも良いとなれば好きにならない理由はありませんよね。
チーズの種類を分類分けする際に、「シェーブル」という分類があるように、山羊乳製チーズは他のチーズと少し違う作り方をします。
乳酸菌が活発に働く約30℃まで原料乳を温めます。
その後、乳酸菌をミルクに加えます。
少量のレンネット(凝乳酵素)を加え、ミルクを凝固させます。
投入するレンネットの量は他の乳種のチーズよりも少なく、基本的に乳酸の力で24~48時間かけてゆっくりミルクを固めます。
また、フランス・ロワール地方の有名チーズの中にはレンネットを一切加えないチーズもあります。
山羊乳製チーズ特有の酸味は、この製法からきています。
柔らかい豆腐状に固まったら、カード(凝乳)は切らずに優しくすくって型に入れ、反転を繰り返しながら脱水させます。
通常のチーズは、凝固したカードをカットして素早く水分を抜いていきますが、シェーブルの場合はカードを切らずゆっくり水分を抜いていきます。
これによってシェーブルチーズ特有のホロリと口の中で崩れる柔らかい生地が生まれます。
型の種類も地域によって違い、形のバラエティが多いのもシェーブルチーズの魅力のひとつです。
型から外し、表面に塩や木炭粉をまぶして熟成させます。
シェーブルチーズの種類には表面が灰色のものがありますが、これは木炭粉をまぶして熟成させているからです。
表皮の木炭粉は、表面の調湿効果と山羊乳チーズ特有の酸味を和らげる働きがあります。
シェーブルチーズの熟成期間は、最低7~10日程度のものが多いです。
基本的に長期熟成させることは少なく、だいたい熟成1か月以内に楽しむことが多いです。
その間もチーズの外観や味わいの変化は大きく、熟成による味の違いを楽しむのもシェーブルチーズの醍醐味です。
それでは、シェーブルチーズの種類を見ていきましょう。
ここでは数えきれないほどの種類の山羊のチーズから人気の5種類に絞ってご紹介します。
シェーブルの名産地フランス・ロワール地方の山羊のチーズです。
細長い棒状の形をしたシェーブルチーズの代名詞的存在。
基本的にフレッシュ寄りの状態で楽しむ爽やかな味わいのシェーブルです。
シェーブルチーズをどれか一つ試すならまずはこちらがおすすめ。
より詳細記事はこちら→【サント・モール・ド・トゥーレーヌ】
小さいお団子のようなかわいらしい山羊のチーズです。
こちらもフランス・ロワール地方のチーズです。
このチーズは小さい分、熟成の状態によって味わいが大きく変わります。
熟成が進むにつれて表皮にカビが覆いはじめ生地は硬くなりピリッとした辛みを感じるようになります。
栗の葉っぱで包まれたフランス・プロヴァンス地方の山羊のチーズです。
このチーズの特徴は、乳酸菌ではなくレンネット(凝乳酵素)で短時間で凝固させてつくられるため、酸味が穏やかで生地にも弾力があります。
上記2種類の典型的なシェーブルの味わいとはちょっと違った味わいを楽しめるチーズです。
より詳細記事はこちら→【バノン】
山羊乳でつくるゴーダです。
セミハードタイプのシェーブルは珍しいです。
こちらのチーズは、値段も手ごろなので山羊のチーズをたくさん楽しみたいあなたにおすすめです。
この価格なら料理にもたっぷり使えます。
ノルウェー産の山羊のチーズです。
牛乳のホエイに山羊乳や牛乳、クリームを混ぜて煮詰めてつくります。
後味に山羊らしい風味をほのかに感じますが、一言で味わいを表現するならキャラメルです。
コーヒーとともに朝食で食べたくなるチーズです。
北欧雑貨のチーズスライサーでカットすれば気分はさらに盛り上がります。
近年、日本の農家さんが丁寧につくる美味しいナチュラルチーズも増加中。
国産チーズのイベントなどに行くと北海道を中心に日本全国で本当に多くの個性豊かなチーズがつくられていて嬉しくなります。
国産のシェーブルチーズに関してもとてもレベルが高く、新鮮なミルクで繊細につくられた国産シェーブルはフランス産に引けを取らない品質です。
特に次の3件の農家さんのシェーブルはおすすめです。
上の写真にある「茶臼岳」というシェーブルチーズはぜひ試してほしい一品です。
口溶けの滑らかさと上品で繊細な味わいにまさに日本らしさを感じます。
国産シェーブルと言えばまず挙がるのが三良坂フロマージュです。
こだわりと広島の個性がつまったチーズ造りにファンが多い農家さんです。
北海道の富良野で山羊チーズのスペシャリストであるロバート・アレキサンダー氏が手掛けるシェーブルです。
山羊チーズの嫌なクセはなく、自然で優しい風味に北海道の自然を感じる美味しいシェーブルです。
このほかにも美味しい国産の山羊チーズはたくさんあります。
特に国産シェーブルは季節もので一年中手に入るわけではありません。
出会った際はぜひお試しください!
以上、シェーブルチーズについて解説してきました。
山羊のチーズの魅力を少しは感じていただけたのではないでしょうか。
ちなみにシェーブルチーズの旬は「春」です。
春は山羊にとって出産の季節。
春の若草をたっぷり食べた絞りたての新鮮なミルクでつくるシェーブルが美味しくないわけがありません。
現在は一年中手に入りますが、春は美味しい山羊のチーズが一気に市場に増えてきます。
ぜひ春の季節を感じるチーズとしてシェーブルチーズをお試しください。