最終更新日:2018/12/21
チーズの絵を描いてくださいって言われて、みなさんがまずイメージするのはこの形じゃないですか?
三角形で大きな穴の開いたチーズ。ネズミもセットで描くかもしれませんね。
私たちが小さいころ見ていたアニメ「トムとジェリー」の影響でしょうか。
でも、実際こんな形のチーズを見たことありますか?
そもそもこんなチーズが存在するのでしょうか?
あるんです!
それはエメンタールというスイスのチーズです。
名前は「Emmentaler エメンタール」、ドイツ語圏では「エメンターラー」といいます。
スイスのベルン州、エメンタール渓谷が名前の由来です。
スイスの山小屋でつくられる牛乳製のハードチーズです。
写真のスライスだとよくわかりませんが、実際はとても大きなチーズです。
エメンタールは、直径約1mの車輪形で、重さは大きいもので130kgもあります。
一人では到底持てませんね(笑)
その大きさから、スイスでは「チーズの王様」と呼ばれています。
ちなみに、130kgのチーズをつくるには13,000リットルものミルクが必要です!
そのため、エメンタールは個人農家ではなく、多くの場合、協同組合で生産されています。
エメンタールの特徴は何といっても生地に開いている大きな丸い穴です。
トムとジェリーのチーズと言われる所以です。
これを「チーズアイ」といいます。
このチーズアイは、「プロピオン酸菌」という菌がチーズの熟成中に出す二酸化炭素によってつくられます。
そして、チーズアイが多いものほど高品質なエメンタールと言われています。
ただし、これまでチーズアイはこの菌が熟成中に出した二酸化炭素の自然拡散によりできると思われていましたが、
実は、搾乳したミルクの中に含まれている干し草の粉末がチーズアイの核になっていることが最近の研究でわかりました。
実際、同じ造り方をしても原料乳に遠心分離などの処理を施したり、夏場につくるチーズにはアイの数が少ないのだそう。
つまり、ミルクの中の干し草粒子を除去するような処理をしたり、干し草が少ない夏場に搾るミルクには干し草粒子が少ないため、チーズアイができにくいということです。
これは100年の研究の末にやっとわかった事実らしく、チーズに関わる仕事をしている方でもまだ知らない人は多いと思います。
そんなスイスを代表するエメンタールですが、味わいは一言でいうとマイルドです。
塩分は比較的控えめで、ほんのり甘みを感じます。
風味には熟したフルーツやナッツのニュアンスがあります。
エメンタールは、他のハードチーズほどのコクや深みも感じにくく、食べやすいチーズです。
よく知られる食べ方はチーズフォンデュです。
チーズフォンデュは通常複数のチーズをブレンドしてベースをつくりますが、エメンタールを入れるのは王道のレシピです。
他には、サラダの具材入れたり、クロック・ムッシュのようにグリルしたり、削って料理に絡めたりとても使いやすいチーズです。
ワインを合わせるなら、やや軽めのフルーティー白ワイン。
スイスやフランス・サヴォワ地方の白ワインがおすすめです。
トムとジェリーのチーズとして愛嬌のある見た目だけではない、エメンタールの魅力を味わってみてください。