最終更新日:2019/04/08
カマンベールに比べると知名度は低いブリー・ド・モーですが、このチーズの本当の魅力を知っている人はやみつきになります。
パリではカマンベールよりも人気があるほど。
直径は25cm程もあり、その味わいの深さとともに一度出会ったら忘れることはありません。
チーズ好きなら絶対に押さえておきたいブリー・ド・モー。
この記事では、その魅力と楽しみ方をご紹介します。
Contents
チーズの分類;白カビタイプ
産地:フランス(イル・ド・フランス、シャンパーニュ、ロレーヌ)
原料乳:牛(無殺菌乳)
固形分中乳脂肪:最低45%
ブリー・ド・モーは、フランスのパリから東に50キロのイル・ド・フランス地方で主につくられている白カビタイプのチーズです。
ミルクは無殺菌の牛乳を使い、丁寧に手作業でつくられています。
AOCに登録されているチーズで、この「ブリー・ド・モー」という名前を名乗るには上記以外にも厳しい規定をクリアしなければいけません。
それだけ地域の思いとプライドが詰まったチーズです。
また、ブリーチーズにはモー以外に有名なチーズが2種類あり、ブリー3兄弟とも言われます。
一番大きな長男がこのブリー・ド・モー。
中型サイズの次男が「ブリー・ド・ムラン」。次男らしくちょっと曲者です。
三男が小型で一番マイルドな「クロミエ」。
同じブリー地方の名産白カビチーズですが、それぞれ個性があって面白いですね。
ブリ・ド・モーの味わいは、上品かつ繊細でクリーミーです。
無殺菌乳ならではのマッシュルームや土など雨上がりの森を歩いているときのような複雑な香りがあります。
そして、熟成によって生地はトロリと柔らかく、風味はより強く味わいも濃くなってきます。
白カビチーズの中でも特に歴史があり、フランスらしいエレガントな個性をもつチーズです。
最近はスーパーなどでもブリーチーズを見かけますが、「ブリー」と「ブリー・ド・モー」は違います。
単に「ブリー」と表記されたものは、原料乳が無殺菌乳ではなかったり工場でより緩い条件で作られています。
そのため、ブリー・ド・モーよりも風味は軽くさっぱりした味わいのものが多いです。
よく言えばクセがなく食べやすいチーズですが、ブリー・ド・モーの味わいを求める人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。
産地であるブリー地方モー村に由来します。
ブリ・ド・モーは長い歴史を持つチーズです。
西暦774年には、かのシャルルマーニュ(カール大帝)も称賛したと伝えられています。
16世紀のヴァロワ王朝の宮廷では最高のおやつとして愛され、また、ルイ16世は逃亡中でもこのチーズを求めたことから「王様のチーズ」とも呼ばれていました。
ブリー・ド・モーが世界的な名声を手に入れたのは、1814年欧州諸国の首脳が集まったウィーン会議の余興で行われたチーズコンテストでした。
そこでブリー・ド・モーは50以上あるチーズの中から満場一致で「チーズの王様」に選ばれたのです。
さらに、産地が首都パリに近接していたことや、大きなおしゃれな木箱に入って売られていることなどもその人気を後押ししました。
その後、交通網の発達やAOCに認定されたことで生産量はどんどん増え、大手の買収が進み農家製は激減。
現在市場に出回っているブリ―チーズはほぼ工場製になっています。
とはいえ、厳しいAOCの規定に守られて今も職人さんの手作業で丁寧で上質なブリー・ド・モーがつくられています。
ブリー・ド・モーの作り方は、AOCの規定で、産地や原材料、製造方法などの厳しい条件をクリアしなければいけません。
原料乳は一個あたり25リットルの無殺菌乳を使用します。
①ミルクを37℃以下の絶妙な温度に温め、レンネット(凝乳酵素)の力でミルクを凝固させます。
②豆腐のように凝固したものを「ペル・ア・ブリー」と呼ばれる底に穴の開いた専用のレードルを使って手作業で型に移します。
③その後、反転を繰り返し水分を抜いていきます。
④手で乾塩をまぶし、さらに水分を引き出します。
⑤白カビ菌を噴霧し、専用のセラーで4週間以上、定期的にひっくり返しながら熟成させます。
ナイフや包丁を使いカットします。
ブリーチーズは生地が柔らかくナイフに付いたり崩れたりしやすいので、オメガナイフと呼ばれる刃がのこぎり状で、中心に穴の開いたナイフで切るのがおすすめです。
のこぎりのように皮に切れ目を入れてから素早く生地をカットするときれいに切れます。
ブリーは通常、チーズ屋さんでは何等分かにカットされたピースで売られています。
ブリ―チーズは大きな楕円形で、しかもピースの中でも熟成具合が異なるので切り方にも工夫が必要です。
熟成は外側から中心にかけて進みますので外側の皮の部分と中心の生地の部分では味わいが違います。
また、皮も重要な味の要素なので、カットするときはどのピースも均等に皮が付くようにカットしたいところ。
下は切り方の一例です。
ブリーは生地が柔らかくてきれいにカットするのが難しいチーズの一つです。
冷蔵庫から出したての固い状態で切るのもコツのひとつです。
切り口に重ね折りしたアルミ箔を貼って生地が流れ出るのを防ぎます。
そして、購入時に包まれている紙、なければキッチンペーパーで包み密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。
ラップでも問題はありませんが、熟成時に発生するアンモニアを閉じ込めるためあまり良くありません。
ただし密閉容器にほかのチーズも入れている場合、におい移りもありますので気になる場合はラップで包みます。
ブリーチーズは乾燥に弱いチーズです。
表面が乾燥して食感が悪くなったり、変色も早くなります。
容器の上から濡れタオルをかけておくと冷蔵庫内でもチーズの乾燥を防ぐことができます。
ブリーは熟成の状態によって味わいが変化します。
あまりクセがない方がお好きな方は、若めのものを選ぶようにしましょう。
熟成が進むと生地はトロリと柔らかく、アンモニアなどの香りや塩味も強くなってきます。
強めのお味が好みなら、賞味期限の近いものを選ぶか少し冷蔵庫で寝かせて熟成が進むのを待ちましょう(一日数時間でも常温に戻して置いておくと熟成が早まります)。
注意点として、冷蔵庫で寝かせるとチーズが乾燥して食感が悪くなりがちですので乾燥対策は確実に!
上質な「ブリー・ド・モー」は、ぜひそのまま食べましょう!
食べ方のポイントとして、チーズの温度を室温に戻すために食べる30分前には冷蔵庫から出しておくことをお忘れなく。
食感や香りの開き具合が断然違います。
付け合わせを選ぶなら、ブリーの香りからも感じるキノコがおすすめです。
シャンピニオンのソテーやトリュフのペーストなどを合わせると驚くほどマッチします。
バゲットにのせたり、ブリーチーズとキノコや野菜のサンドイッチにするなどシンプルな食べ方で十分幸せな気分に浸れます。
ブリー・ド・モーは現在市場に出回っているものの大半は工場製です。
しかし、単一の農場でミルクからチーズになるまで一貫してつくる農家製にこだわっている生産者もいます。
このロートシルト社もそのうちの一つで、この生産者のものは現在日本で入手できる唯一の農家製ブリー・ド・モーです。
ロートシルト社はあのボルドー5大シャトーのラフィットやムートンを手掛ける会社で、大変な労力をもって農家製を守っています。
ぜひ他のブリーと食べ比べてその価値を実感してみてください。
ロートシルトに比べると味わいの強さや複雑さは劣りますが、それでも十分美味しく幸せな気分に浸れます。
工場製のブリー・ド・モーで特に評価が高いのがこのドンジェ社のチーズです。
スーパーで売っているブリーとは格の違いを確実に感じますよ!
ちょっと贅沢なチョイスですが、先ほどご紹介した農家製ブリー・ド・モーを手掛けるロートシルト社のシャンパーニュです。
シャンパーニュの中でもすっきり繊細かつバランスの良い王道シャンパンです。
食事のスタートにこのシャンパンとブリのアペリティフを出せば気分は一気に上がること間違いありません。
あるいは、ゆっくりこのシャンパンとともに食事を楽しんだ後に、ブリーとともに最後の一杯を楽しむのも贅沢です。
赤ワインは幅広く合いますが、なるべく渋みが強すぎないワインの方がブリーのクリーミーさを壊さないのでおすすめです。
ブリ―のようなコクがあり複雑な白カビチーズには赤ワインも大変マッチします。
産地はやはりフランス産にこだわりたいところ。
コートデュローヌやボルドー(メルロー主体)のミディアムボディ程度が良いでしょう。
上にご紹介した赤ワインも同様にロートシルト社のコスパ赤ワインです。
これまで見てきたように、ブリー・ド・モーは歴史も長く、フランスの美食界でも大変重要な地位を占めてきたチーズです。
チーズを食べつくしたフランス人が、最後に一つというならブリーを選ぶという言葉もあるほど。
上でご紹介したようにブリーとブリー・ド・モーは品質が全く違います。
ブリーチーズは今やスーパーなどでも手に入りますが、無殺菌乳でつくる「ブリー・ド・モー」こそ本当のブリーです。
どちらも魅力的なチーズですが、ぜひフランスが誇る歴史あるブリー・ド・モーで贅沢な時間を演出してみてください。