最終更新日:2018/12/21
例えばレストランやお店で「好きなチーズは?」と聞かれて「ロックフォール」と答える人はなかなかいません。
でも、「ロックフォール」と答える人がいたら、美味しいものを食べ慣れている要注意人物として扱われるでしょう(笑)。
ちょっとマニアックだけど知っている人は知っている本当に美味しいチーズの一つがロックフォールです。
この記事では、ロックフォールの基礎知識と食べ方について説明します。
Contents
チーズの分類:青カビタイプ
産地:フランス(ミディ・ピレネー地方)
原料乳:羊(無殺菌乳)
固形分中乳脂肪:最低52%
ロックフォールは、フランス南部のミディピレネー地方で羊の無殺菌ミルクからつくられるブルーチーズです。
世界3大ブルーチーズの一つで、そのチーズの魅力に世界中の美食家が虜にされています。
特徴は、口に入れると溶けてしまうほどの口当たりの良さ、力強さのなかに感じるコクと甘み、豊かな風味が続く長い余韻です。
これとワインさえあれば他は何もいらないくらい心にしみる味わい深さがあります。
また、つくられ方にも特徴があります。ロックフォールはAOCの規定で、南フランスの「ロックフォール・シュール・スールゾン村」の洞窟内で2週間以上熟成させなければなりません。
無殺菌の上質な羊のミルクを天然の洞窟で熟成させてつくる、まさにロックフォール特有の他では真似できない味がここにあります。
美食の世界でも定番チーズの一つで、これと甘くエレガントな貴腐ワインとの組み合わせはどんな教科書にも出てくる王道中の王道です。
産地であるフランス・ミディピレネー地方アヴェロン県ロックフォール・シュール・スールゾン村の名に由来します。
ロックフォールが誕生したのは約2000年前とも言われています。あるとき若い羊飼いが、好きな女の子を追って洞窟にパンとチーズを置き忘れました。後日洞窟に戻った羊飼いは、青カビが生えたチーズを見つけます。恐る恐る食べてみるとそれが大変美味しかった。そして、それがきっかけで洞窟でチーズがつくられ始めたという伝説があります。
11世紀、南フランス・アヴェロン県にある修道院にロックフォールの洞窟のチーズが寄進されたという記録が残っています。
15世紀にはシャルル6世がロックフォール・シュール・スールゾン村にこの洞窟でチーズを熟成させる特許状を与えます。
1925年、フランスのチーズとして初めてA.O.(原産地名称)を取得。
1979年、AOCを取得。
①ラコーヌ種という羊のミルクのみを使います。また、飼料はロックフォールの指定地域から得たものが3/4以上である必要があります。また、放牧が可能な時期は放牧させなければいけないと規定されています。製造は羊の泌乳時期に合わせ、12月から翌6月まで行われます。
②成分無調整の原料乳に、乳酸菌、レンネット、青カビを添加し、ミルクを凝固させます。
③凝乳を小さくカットし、かき混ぜながら水分(ホエイ)の分離を促します。
④ホエイが抜けたカード粒を型に入れます。この時、カード粒間に隙間ができるようにパラパラした状態で入れるのがポイントです。その空隙に、のちに青カビが生育します。
⑤型から外し、表面に粗塩をつけます。その後、生地に小さな穴をあけて、内部に空気が行き渡り、中まで均一にカビが生えるようにします。
⑥ロックフォール・シュール・スールゾン村の洞窟にチーズを移動し、そこで2週間以上熟成させ青カビが均一に生えたことを確認したら金属箔で包みます。
⓻低温熟成庫にチーズを移し、さらに熟成させます。(洞窟に移してからトータルで3か月以上)
⑧包装し出荷されます。
ロックフォール製造方法の動画はこちら→「How It’s Made Roquefort cheese」
ロックフォールは、ブルーチーズの中でも特に崩れやすい脆い組織をしています。
ナイフでカットも可能ですが、ハンドリナーという針金を使うとさらに簡単、きれいにカットできます。
ロックフォールの切り方も注意が必要です。
外側の皮の部分はカビが少なく、塩味も強いです。
つまり、外側と内側では味わいに大きな差があります。
カットする際は、なるべく写真のように中心から放射状にカットするようにしましょう。
青カビタイプは光に弱く、組織が脆いのでアルミ箔で包みましょう。
また、ロックフォールは生地に含まれる水分量が多いので、購入してすぐは、生地から水分が染み出してきます。
これを放置していると風味の劣化に繋がるので、キッチンペーパーで包んでからアルミ箔で覆うのがベストです。
ロックフォールは購入してからは水分が生地から抜けていき、食感は硬く塩味も強くなってきます。
極端な状態の変化はありませんが、購入後早いほうがより美味しく楽しめます。
ロックフォールは、そのままで十分美味しく召し上がれます。
はちみつやコンフィチュール、ドライフルーツなどともマッチします。
ロックフォールは青カビタイプの中でも味わいが強いので、気になる場合はクラッカーや薄くスライスしたバゲットなどと合わせましょう。
また、もちろん料理にも使えます。
ちょっと贅沢ですが、ジャガイモやかぼちゃと合わせてサラダにしたり、パスタなどのソースに入れるだけで一味違う上品な味わいに仕上がります。
ぜひいろいろな表現で十二分にロックフォールを楽しんでみてください。
ロックフォールを製造する会社は現在7社のみ。同じロックフォールでも、機械化が進んだ会社から手作業にこだわる会社まであり、味わいにも大きな差があります。その中でもカルル社のロックフォールは一番おすすめです。作業も手作業にこだわり丁寧につくられています。ミルクのコクや甘みもしっかりしていて本当に味わい深い魅力的なロックフォールを感じていただけると思います。
上質なロックフォールに贅沢にソーテルヌ村のヴィンテージ貴腐ワインはいかがでしょうか。1999年と20年近く熟成されていますが、貴腐ワインの場合まだまだ元気です。生き生きとしながらも程よい熟成感とエレガントさを感じさせてくれます。単体でも素晴らしいですが、ロックフォールと合わせれば幸せな瞬間は保証されます。
ロックフォールには、貴腐ワインのような甘口ワイン以外に、赤ワインがおすすめです。
白ワインは正直合いません。
赤ワインであれば何にでも合いますのでぜひお好みの赤ワインと。
ボルドーやブルゴーニュのようなエレガントなワインで合わせるのがベストですが、同郷で合わせてタナ種の赤ワインはいかがでしょう。
ロックフォールはブルーチーズの中でも特に力強い味わいのチーズです。
しかし、力強さだけでなく、口当たり、風味、味わいすべてに上品さも感じるところがこのチーズのすごいところだと思います。
ファンも多く、レストランやバーで「ロックフォールないの?」と指名する人も珍しくありません。
美食家までをも魅了し続けたロックフォール。
ぜひその魅力を実際に堪能してみてください。