最終更新日:2018/12/21
あなたは細長い灰色の棒状のチーズを見たことはありませんか？
チーズには本当にさまざまな形のものがありますが、この「サント・モール・ド・トゥーレーヌ」も一度見たら忘れられない形をしています。
日本ではあまり馴染みはありませんが、フランスでは人気のシェーヴルチーズです。
輪切りにカットしてお皿に並べるだけで、一段とおしゃれに仕上がります。
味わいも爽やかで食べやすく、料理にも使いやすいチーズです。
今回は、そんな「サント・モール・ド・トゥーレーヌ」の魅力と楽しみ方をご紹介します。
Contents
チーズの分類：シェーヴル
産地：フランス（ロワール地方）
原料乳：山羊（無殺菌乳）
固形分中乳脂肪：最低４５％
サント・モール・ド・トゥーレーヌは、フランス北西部・ロワール地方でつくられる山羊乳製チーズです。
フランスでは大変人気のあるチーズで、AOPのシェーヴルチーズの中で常に生産量トップをキープしています。
特徴は、この細長い棒のような形と灰色の表皮です。この棒状の形ですが、よく見ると左右で太さが違います。
これはチーズを型から外しやすくするために型の形が工夫されているためです。
灰色の表皮には木炭粉を塩に混ぜて纏わせています。この木炭はチーズの酸を中和させ、風味をマイルドにすること。チーズを雑菌から守ったり、チーズの水分放出を穏やかにし、皮が硬くなるのを緩和する、熟成を促すなどの効果があると言われています。
また、このチーズの中心に通ったライ麦の藁も特徴のひとつです。これは、チーズが割れるのを防ぎ、外と中を均等に熟成させる役目をしています。この藁には一本一本に生産者の識別番号とチーズ名が書かれており、それを職人が手作業でチーズに通します。
味わいは、ロワール地方のシェーヴルチーズの典型です。若いうちは柔らかく酸味がありフレッシュ。熟成が進むと山羊特有の風味やコクが増してきます。
生産地であるフランス・ロワール地方の村の名前に由来します。
フランス・ロワール地方はシェーヴルチーズの一大産地です。そのロワール地方に山羊が持ち込まれたのは８世紀。当時南スペインから侵攻してきたサラセン軍をフランス軍が迎え撃った「ポワティエの戦い」がきっかけと言われています。サラセン軍は食料源として山羊を連れていて、敗戦して軍が去った後もその山羊と山羊チーズの製法が残され今に至ります。
１９９０年AOC取得。
①ミルクは１８～２０℃に温めて、主に乳酸菌の力で２４時間かけて凝固させる。
②凝乳を型に入れ、余分な水分を抜いた後、型から出して中心にライ麦の藁を１本通す。
③塩に１～２％の木炭粉を加えたものを表面にまぶし、最低１０日間熟成させる。
なるべく薄刃のナイフかハンドリナーという針金で輪切りにカットします。
よく見ると両端の太さが微妙に異なります。カットするときは、太いほうから切りましょう（細いほうからカットするのは縁起が悪いと言われています）。その時は、切る側と反対方向に藁を少し引っ張り、カット部分の藁を抜いた状態で切ります。
もし、熟成が進んで藁が抜けないようなら、１切だけチーズを回しながらカットし、切り口側から藁を押してみてください。おそらく抜けるはずです。
切り口に重ね折したアルミ箔を付け、購入時に包装されていた紙で包みます。この紙はシェーヴルチーズ専用の包装紙ですので、保存するのに最も適しています。もし汚れたりして無い場合は、クッキングシートで包みましょう。
シェーヴルチーズは熟成段階によって味わいが変わってくるのが魅力のひとつです。
若いうちは柔らかく酸味があって爽やか。熟成が進むと中身は締まり風味も強くなり、塩気やクリーミーさコクが増してきます。
食べごろは好みではありますが、まだ柔らかさの残る少し若めの状態の方が人気があるようです。
そのままでも当然美味しく楽しめます。
個人的にはバケットにはちみつをかけたクルミとともにのせて食べるのがおすすめです。
定番は、スライスをパンにのせて焼いてサラダとともに食べるシェーヴルショーのサラダです。
シェーヴルチーズは熟成によって味わいに差がでるチーズです。このチーズはM.O.Fという日本でいう人間国宝に値するチーズ熟成士が手掛けたチーズです。嫌な山羊臭さはなくシェーヴルチーズの魅力を存分に味わえます。美味しいシェーヴルの味はこのチーズで覚えましょう。
ノンアルコールなら、ハーブティーや紅茶、浅煎りのコーヒーが相性としておすすめです。ロワール地方のシェーヴルチーズと王道の組み合わせは同郷のソーヴィニヨンブランというブドウでつくる白ワインです。ハーブや柑橘のような爽やかな香りに、酸とミネラルの清涼感を感じる味わいのワインです。これに勝る組み合わせはありません。
シェーヴルチーズの中でも特異な形のサント・モール・ド・トゥーレーヌ。
私はこのチーズの一番の魅力は、お皿にのせたときのインパクトだと思います。
例えば、このチーズが冷蔵庫に入っていれば、急な来客があってもカットしてハーブティーとともにちょっとお菓子の横に添えるだけで小洒落たおもてなしができます。
美味しいだけでなく、おしゃれアイテムとしても使えるのがこのチーズの良いところではないでしょうか。
もちろん味が美味しいのは言うまでもありません。
