最終更新日:2019/04/02
チェダーチーズは最も知名度の高いチーズのひとつです。
スーパーでも売っていますし、チェダーチーズを使ったお菓子やおつまみもたくさんありますよね。
一方で、知名度はあるけどチェダー自体どんなチーズなのか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事ではチェダーの特徴や作り方、歴史から食べ方、おすすめチェダーまでチェダーチーズに関する幅広い知識をご紹介します。
Contents
チーズの分類:セミハード
産地:イギリス(南西部)
原料乳:牛
固形分中乳脂肪:最低48%
現在は世界中でつくられているチェダーチーズですが、本場はイギリスです。
チェダーはまさにイギリスを代表するチーズです。
チェダーの特徴は、しっかりした食感がありながらホロリと崩れるしなやかな生地。
同じセミハードタイプのゴーダチーズと比べると生地の質感が違うことがよくわかります。
下の写真のようにゴーダに比べて水分量や弾力性が低い崩れるようなテクスチャ―です。
チェダーの味わいの特徴は、バターのような風味とほのかな酸味です。
味わいを形に例えるなら、ゴーダが丸、チェダーが四角のようなイメージです。
このようなチェダーの質感や味わいの特徴は「チェダリング」というチーズの作り方から生じています。
もうひとつチェダーに関して知っておきたいのが、チェダーには農家製と工場製があることです。
農家製の伝統製法でつくられるものは、形は円筒形で、布に包んで熟成され、風味には土っぽい複雑な印象が加わります。
下の写真は伝統製法でつくられたチェダーチーズです。
皮に布が巻かれ生地の色や質感もより複雑なのがわかります。
一方、工場で大量につくられたものは、ブロック形でプラスティックフィルムやワックスで包んで熟成され、風味もより単調です。
食べ比べてみるとまるで別ものと思えるほど違います。
また、アナト―色素でオレンジ色に着色したレッドチェダーもよく見かけます。
レッドチェダーも基本的には色が違うだけで風味は通常のチェダーとほとんど変わりません。
フランスの修道士が村の農民たちに製法が伝えたのが始まりと言われています。
原産地であるイギリス・サマーセット州は年間を通して温暖でチーズ造りが盛んな地域です。
農家の人々は夏につくったチーズをチェダー渓谷の洞窟に入れて保存していました。
それに由来して16世紀にチェダーと名付けられ、人気を得ます。
その後、移民によってオーストラリアやアメリカにも製法が伝わり、現在も精力的につくられています。
20世紀になってチェダーが世界中の工場でつくられるようになると、本来のチェダーの製法が失われることを懸念した生産者たちが集まり、1982年に「West Country Farmhouse Cheesemakers」が結成され、現在は「ウェスト・カントリー・ファームハウス・チェダー」として、P.D.O.で伝統製法のチェダーが守られています。
上で述べたように、チェダーチーズの特徴は作り方によって生じています。
その作り方で鍵となるのが「チェダリング」と呼ばれる工程です。
チェダリングとは塊となったカード(凝乳)を切断して積み重ねたり反転したりを繰り返すことで乳酸発酵を進ませることを言います。
「乳酸発酵が進む=乳酸菌が乳糖を食べ乳酸を生み出す」ことなのでカードのpHが下がり雑菌の繁殖を防ぐことができます。
また、カードの収縮も進むので生地の水分量も少なくなり保存性がより高まります。
味わいにも乳酸の影響からくるほのかな酸味が感じられます。
チェダーの作り方の流れは次の通りです。
①ミルクを乳酸菌と凝乳酵素で凝固させる。
②凝乳を賽の目にカットし、38℃までゆっくり加温しながら撹拌する。これによってカード(水分の抜けた凝乳)から水分の排出が促され、カードが引き締まる。
③ホエイ(水分)をバットから抜き、カード粒同士が決着して塊になるまで待つ。
④温度を保ったバットの中で塊を適当な大きさに切り、積み重ねる。
上下を入れ替えながら反転し、ホエイの排出を促す。このチェダー独特の積み重ね作業を「チェダリング」と呼び、この作業によってチーズの酸度が高まりチェダー特有の酸味が表現される。
⑤カードをさらに1.5~2cm大のダイス状にカット(「ミリング」と呼ばれる)し、加塩する。
⑥円筒形の型に細断したカードを詰め、プレス機でプレスして成形する。(本来は円筒形だが、現在アメリカやオーストラリアなど海外ではブロック型が主流)
⑦布型から取り外し、布を巻き、ラードを塗って熟成させる。(現在ではプラスティックフィルムやワックスで包んでから熟成させる方法が取られることが多い)
チェダーの作り方を動画でチェックしたいあなたはこちら
→「Making Gould’s Cheddar. The Cheddaring Process」
チェダーは他のセミハードタイプのチーズと同様に、包丁やナイフでカットします。
皮がある場合は取り外して楽しみましょう。
また、料理に入れて溶かして楽しむ場合はチーズおろし器でシュレッド状にします。
購入時のチーズセロファンかアルミ箔、あるいはラップで包んで密閉容器で冷蔵保存します。
チェダーは他のセミハードタイプのチーズと比べて水分量が少ないので日持ちします。
とはいえ、購入してから熟成による良い変化はありませんので、購入したらなるべく早く食べきりましょう。
チェダーチーズは風味豊かでクセも穏やかなので様々な食べ方ができます。
チーズ自体も比較的安価なので料理にもたっぷり使えます。
熟成の若い工場製のチェダーチーズは、サンドイッチやタルティーヌ、サラダの具材として。
また、野菜などの上にのせてグリルしたり、削ったチェダーチーズを溶かしてソースする食べ方もおすすめです。
レッドチェダーをチョイスして料理をより鮮やかに仕上げるのも楽しいです。
チェダーチーズの豊かな風味と酸味のある上品な味わいをぜひ料理に活かしてみてください。
また、農家製の長期熟成したものは、料理に使わずにぜひそのまま食べて複雑な風味を楽しみましょう。
チェダーチーズをお酒と合わせるなら、同郷イギリスのウイスキーやビールと合わせるのがおすすめです。
ワインをチェダーに合わせるならコクありの白ワインかやや軽めの赤ワインがおすすめです。
こちらが、伝統製法でつくられた農家製のチェダーです。ブロックでつくられる工場製のチェダーとは食感の繊細さや味わいの複雑さが違います。ぜひ本物のチェダーの味を体感してみてください。
シュレッドチーズでレッドチェダーを選べば料理がより鮮やかになり、目でも楽しめます。
セルロースなしの大容量タイプ。
冷凍すれば長く保存できます。
いかにチェダーチーズをたっぷり合わせた本格おつまみです(笑)
お酒好きなあなたはぜひ試してみてください。
チェダーチーズは、チェダリングという独特の製法からくる、ほろりと崩れるような生地とほのかな酸味が特徴です。
特に本場イギリスの伝統製法でつくったものにはその特徴が顕著で、風味や味わいには複雑さや深みがあります。
まだ試したことのないあなたは一度召し上がってみてください。
一方で、アメリカやニュージーランドなどイギリス以外でも大量につくられている工場製のチェダーチーズ。
食感はよりソフトで弾力があり風味はより穏やかで、品質は本場イギリスの伝統製法でつくったものとは大きく異なります。
しかし、誰でも食べやすいクセのなさやコストパフォーマンスの良さで人気なのは言うまでもありません。
チェダーはシュレッドチーズにもブレンドで入れられることの多いチーズです。
ブレンドでは、チェダーチーズは主に風味と酸味をプラスする役割で入れられています。
このように、チェダーも味わいや品質にバリエーションがあり、さまざまな顔をもつチーズです。
それぞれの状況に合わせてチェダーチーズを選んで、ぜひ特徴を活かした食べ方をしてみてください。