最終更新日:2018/12/21
チーズにもそれぞれの国を代表するチーズがあります。
そしてフランスを代表するチーズといえば「コンテ」です。
コンテは、日本ではパルミジャーノなどに比べると若干マイナーなチーズですが、その品質は素晴らしくコンテにしかない魅力的な風味や味わいがあります。
チーズ先進国フランスのこだわりが詰まったコンテ。
そのこだわりと魅力をご紹介します。
Contents
チーズの分類:ハードタイプ
産地:フランス(ジュラ山脈一帯)
原料乳:牛乳(部分脱脂乳 無殺菌乳)
固形分中乳脂肪:最低45~54%
コンテはフランスとスイスの国境にある、フランシュ・コンテ地方でつくられるハードタイプのチーズです。
コンテという名前は、生産地であるフランシュ・コンテ地方の名前に由来します。
フランスでは生産量、消費量ともにナンバー1。
フランス人に最も愛されているチーズです。
コンテはひとつ約40kgもある大型のチーズで、製造も酪農家、チーズ工房、熟成専門業者とそれぞれ分業・連携してひとつのチーズをつくっています。
コンテは、生産量も大変多いですが、品質に対する規定も厳しく、安定した高品質なチーズであることも人気の理由です。
コンテは、チーズの品質によって2階級の評価がなされます。
コンテを出荷の際、熟成士がそれぞれのチーズを20点満点で採点します。
さらに、専門家による鑑定団が定期的に検査し、評価を管理しています。
〇茶色のラベル:検査で12点以上のもの
〇緑色のラベル(コンテ・エクストラ):検査で14点以上のもの
※12点に満たないものは「グリュイエール」として市場に出されます。
コンテの味わいは土壌や気候、牛が食べる草花によって決まり、各チーズ工房によって土地の個性が表現されています。
季節によっても風味に変化が生まれます。
夏につくったコンテは「été(エテ)」と呼ばれ、より複雑で果実の香りが感じられます。
冬のコンテにはヘーゼル夏や煎り豆のようなニュアンスが感じられると言われています。
コンテの熟成期間は最低4か月。
18か月~24か月で風味のピークをむかえます。
チーズの熟成によって、よりアミノ酸の旨味、栗やナッツなどの香りが強くなります。
このようにコンテは、その土地の風土や季節、つくり手、熟成期間などからくる多様な風味が最大の個性と言われています。
ジュラ地方の農家たちは、厳しい冬の食料を確保するため、ミルクを保存する方法として大きなチーズをつくるようになりました。
14世紀にはジュラ山地一帯の「大型チーズ」の製造についての文書が残されています。
1958年、AOCに認定。
1963年、コンテチーズ生産者協会(CIGC)が設立される。
1996年、AOPに認定。
コンテは1個で約40kgある大型チーズです。
そのため製造はすべて分業制になっています。
<酪農家>
①2700の農場でコンテ用のミルクが生産されています。
ミルクはモンベリアード種とフレンチ・シメンタール種という牛種のもの限定されます。
夏は放牧される牧草地で自然の草花、冬はその牧草で刈り取られた草の干し草を食べて育てます。
それ以外にもミルクの生産にはAOPによる厳しい規定があります。
・牛一頭あたり最低1ヘクタールの土地で放牧。
・牧草地への施肥は最低限。
・発酵飼料は禁止。穀物などの補足肥料にも制限。
・搾乳は朝と夜の2回。
・搾乳後24時間以内にチーズに加工
・ミルクは25km圏内のチーズ工房に集める。
<フリュイティエール(チーズ工房)>
搾乳された新鮮なミルクは主に村の中心にあるチーズ工房に集められ、そこでチーズづくりを行います。
②ミルクを部分脱脂して脂肪分を調整したのち、大きな銅鍋で約30℃に温め、前日のホエイと凝乳酵素を添加しミルクを凝固させる。
③凝乳を米粒大にカットし、その後約55℃まで加熱しながらホエイ(水分)の分離を促す。
④カード(水分を除いた凝乳)を型に詰める。
⑤チーズの側面に製造場所と製造日を記したカードを貼り、型を圧搾機にかける。
⑥熟成室に運ばれ、10~15℃で3週間熟成させる。
<熟成士>
⑦チーズの熟成を専門とする熟成士と呼ばれる職人の手に渡り、チーズの潜在性に適した熟成がされる。
ハードナイフや包丁でカットします。
コンテの皮は、硬く、チーズの食感を悪くするので取り除きます。
また、コンテはチーズの切り方を変えると味わいの感じ方も変わります。
厚みのある切り方をすると、ジャリジャリとした旨味の結晶を感じやすく、より旨味や味わいを楽しめます。
一方、薄くスライスするような切り方をすると、口の中に空気を多く含むので、より食べながら香りを楽しむことができます。
また、すりおろしてグラタンやフォンデュの材料としても使われます。
コンテをどう楽しみたいかで切り方を変えてみてください。
チーズ購入時についているチーズセロファンかアルミ箔、あるいはラップで巻いて密閉容器に入れ冷蔵保存します。
また、コンテを常温に戻す際チーズに汗をかいたり、水滴がついた場合は、まめにふき取ることで風味の劣化を防げます。
コンテのようなハードタイプのチーズは、日持ちはしますが、表面に脂肪分が浮いてきたり変色したりするので購入後はなるべく早く食べきりましょう。
熟成期間が8か月程度のマイルドで手頃なコンテは、そのままでももちろん、フォンデュやグラタンなどの料理に使っても美味しく楽しめます。
熟成期間が長いコンテは、ぜひそのままで。
はちみつやマスタード、ナッツなどをお好みで添えて。
コンテの個性がしっかりと表現された安定品質のマルセルプティット社製です。
コンテとのマリアージュで最も王道なのが、ヴァンジョーヌと呼ばれるコンテと同郷のジュラ地方でつくられるワインです。
黄ワインという分類で、シェリーに似た酸化熟成させてつくる特殊なワインです。
このほか、同じジュラ地方やブルゴーニュのシャルドネ種の白ワイン、シャンパーニュ、日本酒やウイスキー、ビールと幅広く合わせられます。
コンテはまさにフランスを代表するに最も相応しいチーズです。
そこには、フランスの土地の個性や生産に関わる多くの人々のこだわりが詰まっています。
食べてみれば他の大量生産されている均一的なチーズとの違いは明らかです。
その言葉では言い尽くせない複雑な風味と味わいの深さにはいつ食べても感動してしまいます。
チーズ先進国フランスの味を知るのに、まず最初に食べるべきチーズがコンテです。
まだ試したことのない方は、百聞は一見に如かずで、とりあえず実際に味わってみてください。