ハルーミ

最終更新日:2021/04/08  

 

ハルーミ(Halloumi)は、キプロスの原産のフレッシュタイプのチーズです。ハルミ、ハロウミとも呼ばれます。

 

熱で溶けにくく、ステーキのように焼いて食べれる珍しさがあり、日本でも人気が高まってきています。

 

この記事では、ハルーミとはどんなチーズなのか。ハルーミの産地やつくり方、特徴、食べ方など基礎知識を徹底解説します。

 

 

ハルーミとはどんなチーズ?

 

ハルーミの原産国であるキプロスは、地中海に浮かぶ小さな島国です。その面積は日本・四国の半分程です。

 

 

ハルーミチーズの起源は東ローマ帝国時代という説もありますが、最初の文献は16世紀に羊乳や山羊乳のチーズとして記されています。

 

キプロスでは古くから羊や山羊が飼育されており、ハルーミはそれら家畜のミルクが採れなくなる冬に向けてタンパク源を保存するために造られ始めたと言われています。

 

ハルーミはかつては羊乳、山羊乳製のチーズでしたが、20世紀後半以降は輸出の増大によって牛乳も使用されています。

 

その後も輸出量は増えており、ハルーミはキプロスの重要な輸出品のひとつです。全輸出の1/4を乳製品が占め、ハルーミの年間生産量19,000t中15,000tは輸出されます(2015)。

 

ハルーミは、キプロスのほかトルコなど周辺国でもつくられています

 

キプロスでは、自国の法律によって牛乳のみでの製造は禁止されていますが、トルコなどでは牛乳100%のハルーミも造られています。

 

ただし、2021年4月にハルーミはP.D.Oに認定されたため、産地や乳種の制限もより厳しくなります。2024年までに産地はもちろん、乳種に関しても50%以上は羊乳か山羊乳を使用することが義務付けられます。

 

 

ハルーミのつくり方!製法と味わいの関係

 

ハルーミは、加熱しても溶けにくく、また噛むと繊維状のシコシコした食感があります。それらの特徴はハルーミの独特の製法から来ています。

 

ハルーミのつくり方は一般的に以下のような手順で行われます。

 

1.乳酸菌を加えず凝乳酵素(レンネット)でミルクを凝固させる。

 → 乳酸菌を加えないため、酸味が穏やかなチーズに仕上がります

 

2.凝乳をカットし、加熱しながら撹拌してホエイの排出を促す。

 

3.脱水したカードを型に移し、圧縮して板状にする。

 

4.板状のカードを適当な大きさに切って、熱湯で加熱する(約90℃で30分~1時間)。

 → この加熱する工程によってハルーミ特有の生地の質感が生まれます

 

5.熱湯から引き揚げたカードに塩をまぶし、二つ折りにして成形(この時に乾燥ミントをまぶす場合もある)。

 → この二つ折りにする作業によってチーズに含まれるたんぱく質が繊維状に並び、独特のハルーミの組織が形成されます(食感が近いさけるチーズと同じ仕組み)。

 

6.保存性を高めるために塩水に浸ける(40日程度)。

 →基本的にハルーミは塩水に浸ける工程を行うため強めの塩味が特徴です。

 

また、上記の製造で残ったホエイで造られる「アナリ(Anari)」というキプロスチーズも有名です。アナリは、ホエイにミルクを加え再加熱して熱凝固させたフレッシュチーズです。リコッタチーズと同様の製法で造られ、触感や風味も似ています。

 

 

ハルーミの味と特徴

 

ハルーミの生地は白から淡い黄色で、弾力がありながらもずっしり締まった質感です。

 

 

ハルーミの製法にあるように、二つに折りたたんで成形しているため、写真のように断面の中心には亀裂があります。

 

香りは穏やかで、甘いミルクの香りです(乳種や生産者によってフレーバーは異なりミントの香りがするものも)。

 

ハルーミは塩味は強いものの、風味やうま味は比較的穏やかで優しいミルキーな味わいを楽しめます。

 

ハルーミの一番の特徴は、シコシコとした食感です。歯切れが良く、噛むと細かいそぼろ状に砕けながらキュッキュっと音が鳴る不思議な食感があり、どこかさけるチーズに似ています。

 

ハルーミは、加熱するとより甘味や旨味が増し、食感の弾力性も強くなります

 

 

ハルーミの食べ方

 

ハルーミは融点が高く溶けにくいので、グリルやフライにして食されることが多いチーズです。キプロスでは、ギリシャの伝統料理「サガナキ」のチーズにハルーミが多く使われます。

 

ハルーミはそのまま食べても良いですが、サガナキのようにフライパンにオリーブオイルやバターをひいて表面に軽く焼き色が付くまで焼くだけで美味しさは倍増します。

 

ぜひステーキにしていつものサラダ添えてみましょう。ただし塩味が効いたチーズなのでドレッシングの塩は控えめに。生野菜にのせるだけでも美味しく楽しめます。

 

例えばこんなレシピはいかがでしょうか。

「ハルーミとトマトの爽やかサラダ」

 

キプロスでは、野菜のほか、メロンやスイカ、イチジクなどの果物と合わせたり、燻製したソーセージの薄切りと合わせることもあります。

 

 

ハルーミの塩抜き

味を見て、もしハルーミの塩味が気になったら塩抜きが効果的です。

 

絶対塩抜きが必要なほど塩はきつくありませんが、塩抜きすることでより食べやすい味になります。

 

塩抜きは、適当なサイズの容器にスライスしたハルーミを入れ、水か牛乳に30分~1時間ほど浸します。水の場合、長く浸しすぎると水っぽくなるので注意しましょう。また、ぬるま湯やホットミルクでやるとより短時間で塩抜きできます。

 

 

ステーキにして食べられる数少ないチーズのひとつ

 

以上のようにハルーミは他のチーズとは少し違う個性を持つチーズです。

 

日本人はチーズを溶かして食べることに馴染みはあっても、チーズをフライパンで焼いて食べる人は少ないのではないでしょうか。

 

そもそも普通のチーズで同じことをすれば溶けてカリカリになってしまいます。

 

それがハルーミであれば簡単にチーズをステーキのように楽しむことができます。

 

そして、焼いたチーズのリッチな味わいと香ばしい風味、もっちり弾力の食感は他にはないものです。

 

あなたもぜひチーズの食べ方のひとつにハルーミのステーキを加えてみてはいかがでしょうか。