モルビエ

最終更新日:2020/04/01  

 

モルビエは、断面に黒いラインがあり、むっちりした食感と優しい風味が人気のセミハードタイプのチーズです。また、モルビエは美味しいだけでなく、面白いエピソードもあります。

 

この記事では、そんなモルビエに関する知っておきたい知識から、味の特徴、食べ方まで解説します。

 

 

モルビエの産地と歴史

 

 

モルビエは、フランス東部スイスとの国境近くに位置するフランシュ・コンテ地方で造られるチーズです。モルビエという名前もその地方にあるモルビエ村に由来します。

 

モルビエの産地では、コンテというハードタイプのチーズもつくられています。歴史的には、コンテの方が古く、モルビエはコンテの弟分的な存在です。

 

コンテは大型のチーズで、1個つくるのに大量のミルクを使うので地域ごとに点在するフリュイティエールと呼ばれる共同の製造所で造られます。農家の人たちはそこにコンテの原料となるミルクを持ち込みますが、昔は冬になると雪の影響でミルクが製造所に運べなくなることもありました。困った農家の人たちは、そのミルクを使い各々の農家で自家製チーズをつくり始めました。それで誕生したチーズがモルビエのはじまりだと言われています。

 

近年は、酪農工場でコンテとともに一年中モルビエの生産は行われており、2000年にはAOCを取得してフランスを代表するチーズのひとつとなっています。

 

 

モルビエのチーズ断面の黒いラインの由来と原材料

 

 

モルビエの一番の特徴は、生地の断面中央に走る黒い線です。

 

これはかつて、各農家で1個のチーズをつくるのに凝乳が足りないとき、虫よけのために凝乳上面に銅鍋のススを振りかけて保存し、その上に次の搾乳でつくった凝乳を重ねてチーズをつくっていたことに由来すると言われています。

 

つまり、少ないミルクでチーズをつくっていた農家の知恵からモルビエの黒いラインが生まれたんです。

 

かつては黒いラインは鍋のススでしたが、現在は食品添加物用の自然木の灰が使われています。

 

 

モルビエチーズの特徴

 

モルビエは、フランシュ・コンテ地方の牛乳(無殺菌乳)でつくられるセミハードタイプ(非加熱圧搾タイプ)のチーズです。

 

熟成期間は、最低45日間製造から2~3か月で食べ頃と言われています。

 

 

 

表皮は、ベージュがかったオレンジ色でやや湿っています。香りは、塩辛や腐葉土、少しウォッシュタイプに似たニュアンスも感じられ複雑です。これは表面を塩水でブラッシングして熟成するモルビエの作り方に由来します。モルビエは皮も食べられます(チーズの状態によってお好みで)。より塩辛く複雑な風味がチーズの味の深みを増してくれます。

 

生地は、淡く黄色味を帯びたアイボリー。セミハードタイプの中でも水分量が多く、むっちり弾力のある食感が特徴です。

噛むと優しい甘みにミルクとフルーティーな風味が広がります。生地の味わいは比較的穏やかですが、熟成が進むと旨味と塩味がより強くなってきます。

 

 

モルビエの食べ方

 

モルビエは、クセの穏やかなチーズで食べ方も多彩です。一方で、大量生産のセミハードチーズにはない素朴かつ複雑な風味があり、そのまま楽しみたいチーズでもあります。

 

パンやサンドイッチとの相性も抜群で、サンドイッチの具材にするだけで格がワンランク上がります。

 

お酒と楽しむときは、コクありの辛口白ワインか軽めの赤がおすすめ。また、風味に塩辛のニュアンスもあるので日本酒ともよく合います

 

また、モルビエは焼いても美味しいチーズです。焼くことで風味と甘みが引き立ちます。チーズトーストはもちろん、グラタンに入れても個性を発揮します。

 

モルビエは、購入後も熟成によって風味や味が変化するチーズです。水分が多めのチーズなのでそれほど日持ちはしませんが、冷蔵庫で寝かせながら少しずつ味の変化を楽しむのも食べ方のひとつです。チーズの軽い甘みとフルーティーな風味を楽しむなら早めに。濃いめのクセのある味がお好きならちょっと寝かせてみましょう。熟成させると急激に味が落ちると主張する人もいますが、好みの問題です。