最終更新日:2020/06/11
最も有名なイタリア産チーズのひとつが、パルミジャーノ・レッジャーノです。
今ではスーパーでも容易に手に入る馴染みのあるチーズになりました。
おつまみにも料理にも大活躍の人気のチーズです。
一方で、パルメザンチーズと混同されて呼ばれていたり有名なわりに誤解の多いチーズでもあります。
この記事では、パルミジャーノ・レッジャーノとはどんなチーズなのか作り方や歴史、食べ方など知っておきたい基礎知識をたっぷりご紹介します。
Contents
チーズの分類:ハード
産地:イタリア(エミリア・ロマーニャ州、ロンバルディア州)
原料乳:牛(部分脱脂乳 無殺菌乳)
固形分中乳脂肪:最低32%
パルミジャーノ・レッジャーノは、「イタリアチーズの王様」と称され、世界中で愛されているハードタイプのチーズです。
注目すべきは、その安定した品質の高さです。
パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部の限定された生産地域で、厳しい基準の審査を通ったもののみ名乗ることができます。
その品質維持に大きな役割を果たしているのが「パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会」です。
その協会は、チーズの品質検査を定期で行い、同じパルミジャーノでも微妙な品質の差で以下のようなランク分けを行っています。
PARMIGIANO REGGIANO EXPORT(パルミジャーノ・レッジャーノ・エクスポート)
熟成18か月の時点で再度検査し、最高品質と認められたもの
PARMIGIANO REGGIANO EXTRA(パルミジャーノ・レッジャーノ・エクストラ)
熟成18か月の時点で再度検査し、優れた品質として認められたもの
PARMIGIANO REGGIANO(パルミジャーノ・レッジャーノ)
熟成12か月の時点で検査し、約2年かそれ以上の長い熟成に適していると判断されたもの(その後2年間の長期熟成が許される)
PARMIGIANO REGGIANO MEZZANO(パルミジャーノ・レッジャーノ・メッツァーノ)
熟成12か月の時点で検査に合格しても、微小な傷や内部にわずかな欠陥が見られるもの(側面外皮に平行線の溝が彫られ、より上の品質のものと区別して市場に出されます。価格は通常のものより30%ほど下がります)
GRANA (グラーナ)
検査に不合格になったもの。PARMIGIANO REGGIANOの文字はそぎ落とされ、単にハードチーズとして市場に出されます
パルミジャーノ・レッジャーノの一般的な熟成期間は24か月~36か月です。
中には6年や8年熟成したものもあります。
香りはパイナップルのような甘く華やかでフルーティーな印象。
味わいの特徴は白いアミノ酸の結晶がジャリジャリと音を立てながら感じる凝縮した旨味です。
熟成期間が長くなればなるほど旨味の凝縮感が増してきます。
私たちがよく聞く「パルメザン」は、上記のような厳しい審査が行われていない全くの別物です。
世界中の工場で大量生産で造られているため、品質は大きく劣ります。
このチーズの生産地である、パルマとレッジョ・エミリアという地域名から来ています。
パルミジャーノ・レッジャーノは1200年代、ベネディクト派、シトー派の修道士が、湿地だった現在の産地を開拓し、酪農を営む中で発展してきました。
1955年、D.O.C取得
1996年、D.O.P取得
D.O.C.(現D.O.P.)とは、原産地名称保護の略で、国から委譲された保護協会によってチーズの品質が管理され、その基準をパスしたもののみがチーズの名称を名乗ることができるという仕組みです。
つまり、「パルミジャーノ・レッジャーノ」と商品に表記されていれば、そのチーズは一定以上の品質が保証されているということです。
パルミジャーノ・レッジャーノは、「Consorzio PARMIGIANO REGGIANO( パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会)」がD.O.P.の規則に従い品質と価値を守り続けていて、現在は約350の生産者がいます。
パルミジャーノ・レッジャーノは、商品として出荷されるまでにとても時間がかかるチーズです。
そして、ひとつひとつの工程は職人さんの手作業で丁寧につくられています。
それでは、各工程を見ていきましょう。
手順0
前提としてパルミジャーノ・レッジャーノと名乗るためには、原材料のミルクはイタリア北部の限られた産地の無殺菌乳である必要があります
手順1
前日の夕方のミルクを静置分離で部分脱脂したものと朝絞ったミルクを混ぜて窯に入れて温め、前日のホエイをスターターとして加えます
手順2
凝乳酵素を添加し、ミルクを凝固させます
手順3
凝乳を「スピーノ」と呼ばれる道具で米粒大にカットします
手順4
撹拌しながら、約55℃まで温度を上げホエイの分離を促し、その後カード(水分がある程度抜けた塊)を布に包み上げホエイを分離させます
手順5
型に詰め、成形
手順6
型から取り出し、塩水に20~25日間浸けます
手順7
熟成庫で、最低12か月、通常24か月熟成させます
この間、上でご紹介したように定期的にチーズの熟成状態やポテンシャルの品質検査が行われ、基準に達しないチーズは振るいに落とされていきます。
そして、基準に達したチーズのみが、パルミジャーノ・レッジャーノとして出荷されます。
パルミジャーノ・レッジャーノの食べ方は多彩です。
まずは、切り方によって風味の感じ方が違います。
パルミジャーノに限った話ではないですが、ハードタイプのチーズは切り方によって味わいの感じ方も違います。
切り方による感じ方の変化を理解して、好みの食べ方に合わせた切り方で楽しみましょう。
切り方1:ブロック状に砕く
スコップ形をした「パルメザンナイフ」「アーモンドナイフ」と呼ばれるナイフでかち割り氷のようにチーズを砕く切り方です。(なければナイフで砕いても大丈夫です)。
この切り方は、チーズの旨味と食感をより感じることができます。
特に旨味成分が凝集した熟成期間の長いパルミジャーノ・レッジャーノは、この切り方がおすすめです。
噛むごとにアミノ酸の結晶がジャリジャリと音を立て、強い旨味が口いっぱいに広がります。
お酒のおつまみとしてそのまま食べるときはぜひこの食べ方で。
同郷でつくられるバルサミコ酢をかけたり、黒コショウや山椒など辛みと合わせても美味しく楽しめます。
切り方2:スライスする
薄くスライスすると、チーズの風味(フレーバー)をより感じることができます。
また、削るよりも食感をより感じることができるので、サラダやカルパッチョ、パスタなどでパルミジャーノの風味と食感のアクセントをより強く出したいときにおすすめの切り方です。
専用のチーズスライサーもありますが、一般的な皮むき器で十分きれいにスライスできます。
切り方3:削る
上の2つよりもチーズの味わいや風味を感じるという点では劣りますが、ドレッシングの材料にしたり、料理全体にからませたり、料理の隠し味に使いたいときにおすすめです。
パスタやリゾットに合わせる食べ方は定番ですが、例えば、ご飯に削ったパルミジャーノレッジャーノとオリーブオイルを混ぜ合わせてみてください。フルーティーなパルミジャーノとオリーブオイルの香りが調和し、チーズの上品な旨味とご飯の甘みが口いっぱいに広がり、これだけで贅沢な気分に浸れます。
また、カレーのルーやオムレツの卵に混ぜ合わせてコクと風味を加えたり、細かく削ることで料理に幅広く使うことができます。例えばこんなレシピはいかがでしょうか。
お酒との相性
基本的にどのタイプのお酒にもよく合います。
ワインやビールはもちろん、旨味が強いので、日本酒やウイスキーとの組み合わせもおすすめです。
購入時に付いているチーズセロファンかアルミ箔、あるいはラップで包んで冷蔵保存します。
熟成期間が長いものほどチーズ中の水分量が少ないので日持ちします。
チーズにカビが生えないようにこまめに水分をふき取ったり、包装を取り替えたりしていれば、基本的に賞味期限は気にする必要はありません。
また、料理のひと手間を省くために一定の量をすりおろして密閉容器に保存しておくのもひとつです。
削った状態で保存するとその分空気に多く触れるため風味の劣化は早まりますが、すぐに使える手軽さがあります。保存する際は、なるべく小さな容器を選び、一度におろしすぎないよう注意しましょう。
このチーズは大変日持ちがしますし何にかけても美味しく楽しめるので、1kgをまとめて買うのもおすすめです。
旨味の凝縮感をとことん楽しみたいなら36か月熟成がおすすめです。他のハードチーズではあまり手に入りません。3年チーズを熟成させたらどんな味がするのか、実際にぜひ試してみてください。
これまで見てきたように、パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアの限られた地域でつくられ、決められた原料や製法を守り、大変厳しい検査をクリアした長期熟成タイプのハードチーズです。
魅力は、長期熟成からくるアミノ酸が結晶化するほどの凝縮した旨味と、複雑かつ甘く華やかな魅惑的な香りです。
そのまま旨味を噛みしめながらおつまみとして楽しめるのはもちろん、仕上げに料理にすりおろすだけでいつもの料理の仕上がりがワンランクアップします。
一度味わったら癖になる魅力がパルミジャーノ・レッジャーノにはあります。
このチーズは専門店などにいくと3年以上熟成したタイプも比較的容易に見つかります。
値段も他のフランス産ハードチーズに比べると比較的お手頃です。
おつまみにも料理にも大活躍な使い勝手最強のパルミジャーノ・レッジャーノ。
冷蔵庫の常備チーズのひとつに選んでみてはいかがでしょうか。