最終更新日:2018/12/02
みなさんは同じ牛のミルクでも季節によって微妙に色や味が違うことをご存知ですか?
実際に飲み比べることもできないので感じることは少ないと思いますが実は違うんです。
同じ牛のミルクでも、環境の変化によって乳質が変わり味わいにも変化が出てきます。
では、季節によってミルクはどう変化するのでしょうか?
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春は出産の季節です。
ここで出産した牛は初乳を出します。
初乳とは出産後5日以内のミルクで、成分は通常のものとはかなり違っていて市場に出ることはありません。
日本では初乳を出荷してはいけないと法律で決まっているのです。
その後、乳量は出産後1~2か月でピークを迎え、それから減少していきます。
逆に乳脂肪分などの乳固形分は出産後1~2か月が最も低く、その後増加していきます。
つまり、年間を通して一番出産の多い春は、乳量が最も多くなります。
実際、生乳の生産量は4月が最も高いです。
春はまた、良質な牧草が生える季節です。
3~5月頃の牧草を一番草といい、最も栄養価が高いと考えられています。
その一番草を食べた牛のミルクはもちろん美味しいに決まってますよね。
意外にも乳牛は暑さが苦手です。
乳牛の快適温度は10~15℃とされ、25℃を超えると乳量や乳成分が低下していきます。
これは、暑さのために乳牛の食欲が減り、食べるえさの量が減ることや水を飲む量が増えることが原因のようです。
ですので、夏のミルクは乳成分が低下するぶん比較的さっぱりしていて軽い口当たりになります。
ちなみに、春や夏の青々とした牧草を食べた牛のミルクは黄色がかった色になります。
これは牧草に含まれるβカロテンがミルクに含まれるためです。
秋は、これからやってくる寒さに耐えるようえさを食べて脂肪を蓄えます。
この食べるえさの量の増加に比例して、乳脂肪分が上がってくるのでミルクにコクと濃さが増してきます。
ホルスタインなどの乳牛は寒さにはとても強いです。
たくさんえさを食べ、一年で最も活発な季節です。
乳脂肪分も年間を通して最も高くなり、コクや甘みのある濃厚な味わいのミルクになります。
一方で、えさは干し草がメインになるので、ミルクの色は白くなり、春や夏のミルクよりもβカロテンやビタミン類が不足したものになります。
これまで見てきたように、同じ牛のミルクでも季節によって味わいや色が違うことがわかりました。
では、チーズ造りにはどの季節のミルクが良いのでしょうか?
一般的には、春から夏にかけてのミルクが最も適していると言われています。
これは牛が食べているえさに起因します。
先ほども述べたように、春から夏にかけてのカロテンやビタミン豊富な草花を食べた牛のミルクにはより複雑な成分が含まれています。
冬のほうが乳脂肪分が多く濃厚なミルクになり、生乳として飲むなら美味しいでしょう。
でも春や夏のより複雑な成分を含むミルクのほうが、チーズにしたときの風味では勝ります。
フランス産のハードチーズなどは、この季節のミルクからできたチーズにあえて「été (夏)」と表記を付けて通常よりやや高値で販売されます。
それくらい季節によってミルクの質は違うんですね。